出資 = 相手にとっては資金調達。7%という資金コストを負担してまで資金調達する必要性はどこにあるのだろうか。
あなたとっての「出資」とは、相手にとっての「資金調達」なのである。あなたが7%の利回りを得るということは、相手は7%の資金調達コストを支払うことに他ならない。
日本の信用力の高い企業であれば、まず7%の金利で資金調達をするケースは無い。銀行からの資金調達で1%台の金利、株式市場からの調達で2-3%の資金調達コストで調達できるからである。米国であっても、投資適格企業は5%台だが、7%はジャンク債(投機的格付け)の金利である。つまり、それだけ安価に調達できる資金をわざわざ7%の資金調達コストを支払ってでも得ようとする企業は、市場ではその程度のリスクが織り込まれている企業の可能性があるということだ。
分かりやすい他の例も出すとするなら、住宅ローンである。契約者一人ひとりの信用によって借りられる金額、金利、期間は変わる。信用が高ければ金利は低く、信用がなければ金利は高くなる。
金利の高低は、借り手の信用に依存する。7%という利回りということは、それだけのリスクを織り込んでいるということであり、やはり市場はあなたを特別扱いしない。
7%という利回りはどういうことか
全世界株式に分散するインデックス投資では過去30年で均した利回りが5-6%。S&P500では過去100年で均した利回りが7%(いずれもインフレ調整後)。世界が戦争・リーマンショックなどの恐慌を経て、でっこみ引っ込みありながら、リスクを取った場合の歴史的な利回りの上限値であるといえる。
不動産投資の場合、都内・新築で2-3%、郊外・築古で8-12%(いずれも実質利回りで幅があるが全てを網羅することはできない)。
これらを見ると、7%という利回りがどれだけリスクを織り込んでいる数値かが分かる。
インバウンド需要は増えているが、成田に限った話ではない
まず、近隣の空港と比べてみる。(数字は2024年度のもの)
総旅客数は、羽田が約8,800万人、成田が3,980万人。国内線でみれば羽田は約6,400万人、成田はほぼ無し。つまり、成田はインバウンドの玄関口になっている。
次に年間発着枠であるが、羽田が約45万回、成田が約30万回である。インバウンドの旅行客数は、コロナを経て、また円安になっていることから増加傾向にあり、羽田も成田の年間発着枠は不足気味にあると言われている。そのため、両者とも増強計画がなされている状況にある。
つまり、インバウンド需要が高まっているのは成田に限らない話である。
成田空港周辺が発展するイメージが沸かない
空港周辺にあるのは、利用客向けのホテルか、あるいはゴルフ場、物流施設などが中心である。
また、東京都心まで出るためにかかる時間(ここでは東京駅としよう)を考えると、成田は約1時間(成田エクスプレス利用)、羽田は約31分(京急利用)。
また、成田周辺の地価は羽田周辺に比べ1/10、周辺に存在する主な事業者は物流・倉庫業等。人口規模も違う。それらを見れば、インバウンド観光客が楽しめるところがどれくらいあり、今後もどれくらいの需要が見込まれるか、十分な収益が生まれる具体的なイメージを持つことができなかった。つまり、私にとって7%の想定利回りというのは、市場の高い成長性を反映したものというより、事業者が負担する資金調達コストとして理解するほうが自然に思えたのである。
まとめると
資金調達としては高い金利(利回り)であり、インバウンド需要が膨らんでいるのは成田に限った話でもなく、成田周辺が発展する好材料も無い中、このプロジェクトに出資する判断材料が揃わず、ゆえに当時の判断は慎重であるべきであったと考えている。
資金調達コストというのは、市場がその案件に対してどれだけのリスクを見込んでいるかの一つのシグナルである。高い利回りには、それに見合う理由がある。市場は誰か一人だけを特別扱いしてくれるわけではない。そう考えることが、投資判断では重要なのだと思う。まあ、市場というのが一体何なのかという話ではあるが。